こんにちは。
みなさんは絵の完成をどのように考えていますか?
よく絵には終わりがない、なんて言ったりしますが実際にはどうでしょうか。
教室の中でも生徒さんから、これで完成といえますか?と聞かれることがあります。
今回は絵の完成の目安、終わりどきについて私なりの考えを書きますので、ぜひ最後までお付き合いください。
完成の目安①完成イメージに近づいた時
完成の目安として一番最初に思い浮かぶことは、自分の作品に納得がいった時ではないでしょうか。
思い描いていること、計画していたことを描けた時ともいえるでしょう。
この場合の完成は、達成感や満足感が伴っていることと思います。
なかなか順調に進まないこともあるとは思いますが、ひとまずできた、という実感をもって筆を置くことになります。
これは誰もが理想的な終わり方だと感じるのではないでしょうか。
完成の目安②これ以上描くところがなくなった時
2つ目の完成の目安は、もうこれ以上どこを描いて良いかわからなくなった時です。
これは、まだ経験が浅い方にも多くみられる作品の終わり方です。
まだ描けそうな気もするけれど、とりあえず自分がやれることはやった。
そんな場合はしっかり描き切ったといえると思います。
自分の力を出し尽くしたということになりますね。
絵が上達していくことは、この限界値を少しずつ引き上げていくことだと私は考えています。
そのためには、次の一枚に向けて課題をはっきりさせて、新しい作品に向かうことが大切です。
積み重ねていくと少しずつ描けることが増えてくるので、絵を描くための経験値が上がります。
これ以上描けなくなるまで描くことは、成長の可能性を広げるという意味で理想的な終わり方だと思います。
完成の目安③締切など、外的な要因で区切りをつける時
3つ目は締め切りなどで制作を終わらせる時です。
突然ですが、20世紀の彫刻家にアルベルト・ジャコメッティという人物がいます。
細い針金のような人物彫刻を作ることで知られており、油絵の作品も数多く残されています。
ジャコメッティは創造と破壊をくり返しながら制作をするアーティストでした。
彼は生前、制作には終わりがないと言っています。
作品に完成はないが、締め切りなどの時間によって制作を中断せざるを得ないため、一応の区切りがつくのだそうです。
ジャコメッティにまつわるエピソードを一つご紹介しましょう。
ジャコメッティの彫刻のモデルになった日本人に、矢内原伊作という日本の哲学者がいます。
矢内原はモデルをつとめた時の様子を自身の本の中に記しました。
ジャコメッティは制作の間、黙々と絵を描きますが、だんだん絵が完成に近づいてきたかなと思う頃、突然油絵具でキャンバスを塗り潰してしまうことがよくあったそうです。
完成に近づいては絵を潰し、また描くということをあまりに繰り返すので、当時留学していた矢内原は帰国を何度も延期したという逸話があります。
ジャコメッティの話を聞くと、作品の完成とは何かを考えさせられる気がします。
中々完成しない、そして何度失敗しても描き続けられるということは、きっと自分の作品に満足していないということなのでしょう。
満足したら作り手としては成長が止まってしまいます。
だからこそ、芸術家としての覚悟、気概を感じます。
締め切りなどの期限があると無理矢理にでも制作を打ち切られるので、案外いい意味で諦めがつくのかもしれません。
おまけ:ここでやめておいた方がいいかなと思った時はどうする?
最後に筆を置くタイミングに迷った時のことを描きたいと思います。
みなさんはもう少し描けそうだけど、このくらいでやめておこうかなと思ったことはありませんか?
そしてそんな時、あなたなら描き続けますか?
それともいい雰囲気のところでやめますか?
私はそういう場合、描き続けてやり切った方がいいと考えています。
もちろんやりすぎて失敗する可能性はありますが、そこで得られるのは「ここまでやると失敗する」とわかった経験値です。
絵の引き際は、やりすぎないとわかりません。
目先の雰囲気のよさにとらわれず、次の一枚を良くするために、ぜひチャレンジをしてほしいと思います。