みなさんは油絵具で絵を描いているとき、なかなか絵具が乾かずもどかしく感じてしまうことはありませんか?
色を重ねたいのに先に塗った色が乾かないときは、せっかくの創作意欲も削がれてしまうものです。
しかし、無理に乾燥剤などで早く乾かそうとすると絵に亀裂が入ったりしてしまうので注意が必要です。
まずは油絵具が固まる仕組みを知っていただき、乾燥スピードを調整する方法を色々と試してみましょう。
油絵具が乾燥する仕組み
油絵具は他の画材とは乾燥の仕組みが異なります。
それではどのように乾燥するのかを見ていきましょう。
そもそも絵具は、「顔料」と呼ばれる色の粉と「展色材」という糊の成分からできています。
展色材が乾性油だと油絵具に、アラビアゴムだと水彩絵具になります。
乾燥は絵具の展色材が固まることを意味しています。
水彩絵具は、絵具の中の水分が蒸発することで乾燥し、乾くと少しかさが減ります。
それに対して、油絵具は絵具の中の乾性油が固まることで乾燥します。
油絵具は酸素と乾性油が結びついて乾燥するので、見た目に大きな変化はありません。
油絵具がなかなか乾かない理由は、水彩絵具のように水が蒸発して乾くことと違い、絵具が酸素を取り込むのに時間がかかるからなのです。
乾燥時間は様々な条件下で変わってきます。
具体的に乾燥に影響する条件をご紹介していきます。
乾燥を早めたり、遅らせたりする要因と対策
季節
油絵具が固まるための酸化重合は熱によって促進されやすいという特徴があります。
ですから、同じ絵具を使っても冬場は乾燥が遅く、逆に夏場は乾燥が早くなります。
制作をしていても、夏場は描いている側から絵具が乾いていきますが、冬場は乾燥に数日かかるということも起こります。
毎日描く場合には季節によって乾燥を予測しながら描いてみましょう。
絵具や画溶液
油絵具の中には乾燥の早い絵具とそうでない絵具があります。
これは顔料が酸化を促進する(触媒効果)物質であったり、逆に乾燥を遅らせる物質であると乾燥時間に影響を与えます。
例えばバーントアンバーやコバルトブルー、シルバーホワイトなどは乾燥が早い傾向があります。
しかし、クリムソンレーキのような透明色の有機顔料はなかなか乾きにくい絵具です。
これは使いながら、体感として覚えていくのがよいでしょう。
また、画溶液も早く乾燥するものと遅いものがあります。
たとえば、リンシードオイルとポピーオイルはどちらも乾性油ですが、リンシードオイルのほうが乾燥が早いオイルとなります。
乾燥時間を考慮して使い分けるのも一つの手です。
乾燥材
絵具や画溶液が本来もっている性質よりも乾燥スピードを早めたいという場合には、助剤として乾燥剤を使ってみましょう。
代表的なものに「シッカチーフ」という画材があります。
シッカチーフは乾性油に酸素の供給を助ける働きがあります。
特に冬場の制作では絵具が乾きにくいので、便利な画材です。
ただし、使い過ぎには注意が必要ですので、商品の説明をよく読んでから使用容量を守って描きましょう。
使いすぎると乾燥後に剥離などの原因になります。
まとめ:乾燥が遅いことは悪いことではない
今回は油絵具の乾燥についてご説明をしました。
油絵具はすぐに乾かないので制作に時間がかかるといわれています。
しかし、実際には油絵具の乾燥が遅いことは、制作の上ではよい場合もあります。
たとえば、広い面積を塗った時、早く乾いてしまうと塗りムラができます。
しかし、乾燥が遅いと絵具を塗ったあとにぼかしができます。
これは油絵具特有の性質なので、むしろ長所ともいえるでしょう。
短所として働く場合は適切な対策をし、絵具の長所である部分は効果的に活かしていきたいですね。