こんにちは。
今日は油絵具の画溶液についてのお話です。
油絵具の画溶液はとてもたくさんの種類があります。
その中でも最も多くの方が使用しているものが「ペインティングオイル」。
下描きから仕上げまで使うことができて、基本的にはこの画溶液があればすぐに油絵が描けます。
とはいえ、このペインティングオイルの働きや効果まで理解している方はそれほど多くはないのではと思います。
ペインティングオイルついて理解をしておくことは、ご自身の油絵制作に必ず役立ちます。
できる限りシンプルにご説明していきますので、ぜひお付き合いください。
①ペインティングオイルの役割
まず、ペインティングオイルの働きについて理解しておきましょう。
ペインティングオイルの役割は、油絵特有の深みや光沢のある色彩を引き出し、丈夫な絵肌を作ることです。
具体的には、主に次のような効果が期待できます。
・絵具の粘度を調整する
・光沢を出す
・絵具の定着を良くし、丈夫な絵具層にする
・透明度を調整する
・乾燥を早める
ペインティングオイルなしで描こうとすると、上記のような描き方やオイルによる効果を得られないまま描き進めることになります。
完成してもパサパサした絵肌であったり、数年後にひび割れや絵具の剥離がおきる可能性があったりと、見た目や保存の点からもあまり好ましくありません。
油絵らしい表現にするためにも、適切にペインティングオイルを使って描くようにしましょう。
②ペインティングオイルの主成分
ペインティングオイルは、画材メーカーによってブレンドされた調合溶き油になります。
これさえあれば絵は描けるのですが、ペインティングオイルを正しく使うためには成分についてもある程度理解をしておく必要があります。
ペインティングオイルは主に揮発性油、乾性油、樹脂の素材から成り立っています。
そしてそれに加えて乾燥を早める乾燥剤(ドライヤー)が入ったりもします。
画材メーカー「クサカベ」のペインティングオイルにはその成分と素材の割合等が記載されていますので確認してみましょう。
では、実際にどのようなはたらきがあるのかご説明します。
揮発性油は主に絵具を緩めたり、画溶液の濃度を薄めたりするために使われており、描き心地の調整に使われます。
揮発性という名のとおり、描いた後はオイルが蒸発するので画面には残りません。
一方、乾性油と樹脂成分は画面上に残って乾燥し、絵具の固着を高める役割があります。
乾性油は油絵具にも練り込まれている成分で、より丈夫な画面作りに役立ちます。
樹脂は乾性油よりも早く乾燥し、絵具に透明性や光沢を与える働きをします。
水彩絵具は水が蒸発すれば乾燥といいますが、油絵具は乾性油と樹脂が固まって乾燥するところに違いがあります。
よく油絵は乾くのに時間がかかるといわれますが、これは乾燥の仕組みの違いによるものなのです。
③ペインティングオイルの他にテレピンも用意しよう
古くから云われている油絵の描き方の原則として、「ファット・オーバー・リーン ( 脱脂分の上に脂肪分を)」という言葉があります。
これは、制作の後半にいくほど脂肪分(主に乾性油)を多めにして絵具を重ねていくということです。
具体的には制作の前半では揮発性油を中心に、後半ほど乾性油を主体にした画溶液で制作することを意味しています。
だんだんと艶を出しながら、樹脂と油でこってりと太らせていくようなイメージです。
最初から艶を出しすぎると絵肌がツルツルして重ねる油を弾いて描きにくなるため注意してください。
さて、そうすると実際にはペインティングオイルだけでは制作ができないことにお気づきでしょうか?
制作の前半は揮発性油が中心なのに、ペインティングオイルで描いていくと初めから乾性油や樹脂が混ざってしまいますよね。
したがってペインティングオイルの素材である揮発性油を別に用意し、併用して制作する必要があります。
そこで必要になるのが揮発性油の「テレピン(ターペンタイン)」か「ペトロール」。
制作の前半では乾性油や樹脂を使わずに、この揮発性油で絵具を緩めながら描いてください。
揮発性油は先にも述べたように蒸発してしまうので画面には残りません。
初めは揮発性油で描き進め、制作の後半ほどペインティングオイルの割合を多くしていきましょう。
テレピン(またはペトロール)だけで描いても艶や光沢は出ないので、徐々にテレピンにペインティングオイルを混ぜながら描いていくことで油絵らしい仕上がりになっていきます。
④ペインテングオイルとテレピンの混ぜ方の例
最後に、ペインティングオイルとテレピン(またはペトロール)の混合比をご紹介します。
画材メーカー「クサカベ」の画材カタログでは、ペインティングオイルについて詳しく記載されています。
下記のようなイメージで制作すると、使用方法としては理想的で参考になります。
描き始め テレピン:ペインティングオイル=10:0
制作の序盤 テレピン:ペインティングオイル=3〜4:6〜7
制作の中盤 テレピン:ペインティングオイル=0〜2:8〜10
仕上げ テレピン:ペインティングオイル=0:10
比率に関してあまり神経質になる必要はありませんが、ご自分の絵が今、どのくらい進んでいるのかを考えて画溶液の調整していくことは大切です。
油絵本来のよさを引き出すためにも初めはテレピン主体、仕上げに近くなったらペインティングオイル主体で描くようにしましょう。
まとめ
今回は、画溶液の基礎としてペインティングオイルの成分や使い方についてご説明しました。
慣れてきたらペインティングオイルに乾性油をプラスしたり、一から素材を組み合わせてオリジナルのオイルを作ることも可能です。
いずれご説明していきたいと思いますのでお楽しみに^_^
最後にクイズにトライしてみましょう!
1、ペインティングオイルの成分は揮発性油、乾性油、樹脂、乾燥剤である。
2、油絵を描く時は制作の前半では乾性油を中心に、後半ほど揮発性油を多く使って描くようにする。
3.テレピンやペトロールは乾性油の仲間で、画面に残って固まる。
答え 1、◯ 2、× 3、×