みなさんこんにちは。

今回は「遠近法」についてのお話です。

生徒さんとお話をする中で、みなさんが興味を持たれつていることの一つに「遠近法」があると感じています。

遠近法とは絵を描くための一つのテクニックです。

今回は遠近法とは何か、そしてその種類についてご紹介したいと思います。

知っておくと便利なので、ぜひ参考にしてみてください。

遠近法とは

「遠近法」を一言で説明すると、「絵の中に奥行きを感じさせる方法」です。

たとえば次の例をご覧ください。

りんごのイラスト

りんごが2つ並んでいます。

これだけでは同じものが2個ならんでいるようにしか見えません。

しかし、こうするとどうでしょう?

りんごのイラストを使って重畳遠近法の説明

「重なり」を作ることで前後の関係がわかるようになりました。

シンプルですが、これは一つの遠近法を使った表し方です。

では、今度は別の方法で表してみます。

りんごのイラストを使って遠近法の説明

いかがですか?

色や大きさ、配置の工夫をすることで少し前後を感じませんか?

このように絵(平面)の中に、奥行き(空間)を感じさせるテクニックを遠近法といいます。

そして、この遠近法にはいくつか種類があります。

今回は代表的なものを3つご紹介しますので、一緒にみていきましょう!

遠近法の種類

線遠近法(透視図法)

まず、最もよく知られているものが線遠近法です。

線遠近法は「透視図法」とも呼ばれ、15世紀のイタリアで確立されました。

線遠近法は水平線と消失点を決めて表す方法で、消失点の数によって3種類あります。

一点透視図法の説明
二点透視図法の説明
三点透視図法の説明

箱や、建物を正確に描く場合などはこの線遠近法がとても役に立ちます。

箱や建物の形に違和感を感じるときは、パース(消失点に向かって収束する線の傾き)がおかしい場合がほとんどです。

線遠近法を使った絵の描き方については、もう少し詳しい説明が必要なので、教室でお話をしたいと思います。

色彩遠近法

次は色彩を利用した遠近法をご紹介します。

下の図をご覧ください。

青と黄色、どちらが手前にあるように見えますか?

色彩遠近法の説明

なんとなく黄色が手前にあるように見えませんか?

色には、前に迫ってくるように見える色と、逆に奥に引っ込んで見える色があります。

そして、色に関する心理効果を利用した方法が「色彩遠近法」です。

色相については黄色や赤といった暖色系は前進する特徴があり、寒色系の青などは奥に引っ込む傾向があります。

また、明度や彩度は高い色が前進して見えます。

色彩遠近法の説明

空気遠近法

空気遠近法はレオアルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)が「絵画論」の中で記している遠近法です。

遠くの景色を眺める時、遠くの景色と自分との間にはたくさんの空気があります。

この空気の層の厚さが遠景の見え方に影響することを利用した方法が空気遠近法です。

例えば山の連なりを眺める時、遠くの山々は輪郭はぼやけ、青みがかって見えますよね。

このように距離によって山の色の見え方に違いがあることを利用して遠近感を出していきます。

空気遠近法の説明

空気遠近法のポイントは2つです。

・遠くの景色ほど細部が省略され、輪郭が弱く見える

・遠くの景色ほど青みがかって見える

例えば、レオナルドの代表作『モナ・リザ』の背景には空気遠近法を駆使していることが見受けられます。(画像出典:ルーブル美術館 Louvre Museum

レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』
『モナ・リザ』(右上部分)

遠景には霞んで青みがかった風景が広がっていますよね。

このように空気遠近法は主に風景を描く時によく使われます

遠近法は組み合わせて使う

ここまで、いくつか遠近法をご紹介してきました。

遠近法は絵の中ではいくつか組み合わせて使われることがほとんどです。

例えば次の例をご覧ください。

立方体のイラストを使って遠近法の説明

・線遠近法(箱の形に奥行きを出す)

・色彩遠近法(手前の箱に暖色を使う)

・空気遠近法(奥の箱の輪郭を弱める)

立方体二つを表すだけでも3つの遠近法を使うことができました。

まとめ 絵の苦手意識は知識で補える!

絵を描くときに、見た通りに描けないことを「センス」がないから思い、悩まれる方がいます。

しかし、それはほとんどが「センス」ではなく、練習や知識で補えるものです。

そして、その一つに「遠近法」の習得があります。

遠近法は絵の世界でいうと言葉の「文法」のようなもので、基礎を身につけていく上では重要です。

慣れてくると意識しなくても使いこなせるようになりますのでご安心ください。

焦らず少しずつ、楽しく学んでいきましょう^_^