みなさんこんにちは。
みなさんは石膏デッサンを経験したことはあるでしょうか?
石膏はデッサンを学ぶ際によく使われます。
一般的なイメージとして、美術室にあるような人の形をした白い像を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、実は写真のような幾何学形態の石膏もあるのをご存知でしょうか。
こちらは人型よりも、もっとシンプルな形をしていますね。
デッサンを始めたばかりの方には、モチーフの一つとして幾何石膏をご提案しています。
幾何石膏は基礎を習得するのに適していますので、ぜひ一度は取り組んでいただきたいモチーフです。
今回は具体的にどんな効果を期待できのるか解説しますので、どうぞ最後までお付き合いください。
物の「基本構造」を知ることができる
絵のモチーフには様々なものが選ばれますが、どのモチーフにも「基本構造」というものがあります。
例えばジュースの缶やコップといった工業製品などは、「円柱」が基本の形です。
また、玉ねぎやリンゴ、ボールなどは「球体」の応用ともいえるでしょう。
他にも、レンガやティッシュの箱、建物などは「立方体」や「直方体」をベースにしています。
モチーフにはそれぞれの固有の色や質感がありますが、物にはそれを支える基本構造というものがあります。
デッサンをする上では、この基本構造をおさえることがとても大事になります。
デッサンを始めたばかりのころは、モチーフの固有色や質感にばかり目がいってしまい、つい基本構造を見落としがちです。
しかし基本構造がつかめていない絵は平面的になりやすく、光や空間を感じさせにくいものになる傾向があります。
そこで、モチーフの表面的な特徴よりも、形に目が向きやすい幾何石膏を使って、集中的に基本構造を練習してみるのがオススメです。
基本構造を知ることで、どんなモチーフにも応用が効きますので、後々スムーズなデッサン力の向上が期待できますよ。
形や陰影をつかむ練習になる
よいデッサンの条件として、「正確な形」と「陰影」があります。
幾何石膏はシンプルな構造なので、まずはこれを使って形や陰影をつかむ練習をしてみましょう。
「形」は感覚的に見て描こうとすると、慣れない方はほとんどの場合歪みます。
これはものの見方のくせや錯覚によって起こるもので、知らない間に先入観でものを見ているからです。
正確な形を描く力は練習によって獲得できる技術なので、モチーフを正しく見られるように形を測りながら描いていきましょう。
(デッサン以外の絵では必ずしも「正しく見る」ことが必要とは限りません。絵の表現は自由ですからね。)
形のとり方のコツはこちらの記事もご覧ください。(https://atelier-izumi.com/【デッサン】正確な形をとる方法/)
また、「陰影」の描写もデッサンには欠かせません。
ものが立体的に見えるのは「陰影」があるからで、「陰影=立体感」といってもよいでしょう。
陰影の描写が弱いと、絵に立体的な印象を感じさせることができません。
幾何石膏はの表面は白く滑らかなので、陰影がはっきりと見えるのが良いところです。
まずは光の当たり方や陰影を丁寧に観察し、陰影の描写を練習してみましょう。
鉛筆の調子の幅を広げる練習になる
幾何石膏の白さは、微妙な陰影を映し出しますので、鉛筆の使い方に工夫が必要です。
ところで、みなさんは1本の鉛筆でどれくらいの調子の幅(濃淡)を作ることができますか?
例えばHBの鉛筆で調子の幅を作ってみましょう。
一本でこれくらいの色の諧調があることがわかります。
デッサンに慣れていない方の場合、絵の中のグレーをバランスよく使えず、調子が偏ってしまう傾向があります。
ご自身ではかなりの色幅を使って描いているつもりでも、実際には濃いグレーと薄いグレーの2種類くらいしかなかったり、同じ調子のグレーが多く単調になったりしてしまうことがあります。
鉛筆デッサンは、色を使わない白黒の描写になりますので、どれくらい豊富なグレーで表せるかがポイントです。
よく描けているデッサンは、鉛筆の濃淡がとても豊かに見えます。
丁寧に石膏を観察しながら、美しい調子を見つけていきましょう。
まとめと石膏の種類の紹介
今回は幾何石膏デッサンの効果についてご紹介しました。
単純な形で少し退屈に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、シンプルがゆえに見えてくる形や陰影の美しさがあるように思います。
ぜひ、練習の意味合いだけでなく、石膏の形そのものを楽しんでいただけると嬉しいです。
幾何石膏にはたくさんの種類があります。
箱型や球体、円柱や錐などのシンプルなものから、これらの形を組み合わせた発展的なものまで様々です。
最後に私(武田)がオススメの石膏をいくつかご紹介しますので、みなさまのご参考になればと思います。
ご自身の課題に合わせてお選びください。
基本構造(立方体、直方体)
立方体や直方体は線遠近法を理解するのにとてもよい形です。
まずは箱型に見えるように描くことから始めてみてはいかがでしょうか。
基本構造(円柱、円錐)
円柱や円錐は、円の部分が見る角度によって様々な楕円となって見えるので、楕円の把握の練習に適しています。
また、曲面に現れる陰影も楽しめます。
基本構造(球体)
球体は陰影がなければ円ですが、陰影の描き方で立体的な球に見えます。
球体の陰影を知ることで、ボールやりんごなど、球体の基本構造をもつモチーフへ展開しやすくなります。
発展モチーフ(円錐+直方体)
箱型と円の要素を一度に学べます。
発展モチーフ(円柱+円柱)
円柱を立てた状態と横倒しになった状態をセットで勉強できます。
発展モチーフ(正二十面体)
正二十面体は正三角形の集まりです。それぞれの面で違う陰影を楽しめます。
球体の要素もありますので、球体の応用にいかがでしょうか。